誘拐、監禁、調教の名のもとの虐待からQ(Quincy Mercer)により救いだされたたテス(Tess Snow)、あまりにも過酷な経験から心に壁を作りすべての感情を殺していたが、Qの支えにより、前向きな気持ちを持ち始めていた。しかし、虐待の経験はトラウマやフラッシュバックとなってテスを苦しめる。そんなテスの心の傷をなんとか癒したいと苦悩するQ。そんな矢先、Qは、精神が崩壊したSubを引き取り、リハビリさせる活動がディーラー達の反感を買い、連れ去られてしまう。テスはいかなる時も自分を守り、支えてくれたQを探し出し、誘拐したディーラー達に復讐を誓う。それは彼女自身の過去への復讐でもあった。
著:Pepper Winters
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Monsters in the Darkシリーズの最終部。2部でQの手により心の壁を開けられて(壊されて?)、テスやっと復活! と思いきや、この本の冒頭では、まだテスは心病んでて、アレ、話進んでない・・・とちょっと思ったものの、「まぁ、あんな辛い経験した人間がそんなに劇的には変われるわけないか」と自分を言い聞かせながら読み始めました。
Qのとった、テスへの治療方法は、「目には目を、歯には歯を」とかなり手荒い方法。私は精神科医でもないので、その方法が有効的かは分かりませんが、すくなくともこのストーリーの中ではかなり有効。サドのQは、マゾのテスを痛めつける事で、彼女のトラウマを克服していきます。
しかし今度は、Qが誘拐されてしまう。そしてテスと彼のボディーガード達により救い出されるQ、その後は、2人幸せになりました。と、単純なストーリーのはずが、いざレビューを書こうと思ったら、作者のPepper Wintersが伝えたいメッセージが濃すぎて、深くて、いろいろな思いが、頭をめぐります。
女性の血を見るほどに痛み付けたい、所有したいと思うQは、心の闇と常に葛藤しています。しかしそれを欲望のままに実行してしまったら、彼が心から嫌う彼の父や人身売買のディーラー達と同じになってしまう。彼の人としてのプライドと誇り。それに対抗する欲望と闇。一生自分を愛してくれる女性などこの世にいないと思っていたQだが、男性から痛め付けられれたい、所有されたい、しかし、自分を見失う事はない心の強いテスの出現。2人はパズルのピースのようにピタリとハマります。しかし、そんな2人の関係を妨害する、ディーラー達。
ディーラー達が行う虐待シーンがシリーズ全体を通して、あまりにも過激なので、QとテスのBDSMシーンはエロさに以上に高貴さまで感じられます。サドのQもマゾのテスも、基本愛に飢えた2人、一般的な価値観を超えてとにかく強烈に愛し合います。BDSMシーンは読者を2人の世界にぐっと引き込む力強さがあり、読み応えあります。そんな中、ふっと思うのが、ディーラー達が行う虐待シーンとQとテスのBDSMシーン、人を痛めつけるというコンセプトは同じでも、そこに天と地ほどの違いが大きく生まれ、結果「愛」というキーワードが浮き彫りになる、深い、深い物語です。
バイオレンスとエロの裏と表を、巧みに表現した、素晴らしい物語でした。
The blackness tried to swallow us whole, kill us, ruin us, capture our soul.
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