Blood Kiss: Black Dagger Legacy (1)

再びヴァンパイア騎士団候補生のトレーニングを再開すると、ヴァンパイア界に発表したブラックダガーブラザーズ。希望者60人の若者の中からサバイバルテストによって絞り込まれた7人の候補生は、ブラザーズのトレーニングを開始した。ヴァンパイア王ラス(Wrath)の第一顧問を務める父をもつ箱入り貴族娘のパラダイス(Paradise)は、同じ候補生のクレッジ(Craeg)の存在がつねに気になっていた。
- 胸熱度 60%
- 濡れ度 40%
- 泣き度 40%
- 総合評価 50%
Black Dagger Brotherhoodシリーズのスピンオフ。
J・R ウォードはブラックダガー初期のようなシンプルなロマンスを書きたいと、本家シリーズから枝分かれした新たなシリーズを立ち上げてしまいました。そしてこの本はその1部目。
って、一言いわせてください。スピンオフと言う位ならまったく違う角度のヴァンパイア界を描くのかな・・・と思いきや、そのままブラックダガーシリーズの延長(汗)。もちろんブラザーズも登場する(全員ではないが)のに加え、ブッチ(Butch O’Neal, a.k.a. the Dhestroyer)とメリッサ(Marissa)のその後も描かれており、候補生クレッジとパラダイス、ブッチとメリッサのダブルロマンスの内容。
新キャラが多く登場するから、別シリーズにした? って、そんなん本家シリーズにもすでにジャンジャン登場していて今に始まったことじゃないし。
つまりね、まったく別シリーズにする意味なかったんじゃん? というのがWetRushのファースト・インプレッション。
しかし、こっちは敵対勢力レッサーとの戦闘シーンがごっそりカットとなっており主にロマンスや家族愛、友情なんかに焦点があてられてて読みやすい。まぁつまりは、面白いからいいかと(笑)。
そもそもクレッジとパラダイスの出会いは、本家シリーズ12部で、貴族達のラス王失脚計画が勃発した際、金と欲におぼれる貴族達に嫌気がさしたパラダイスの父は、王失脚計画をブラザーズにリークし、ラスの王としての地位を守るのに一役買った。その後ヴァンパイア界を民主化させたラスは、ツレのベス(Elizabeth Randall)の父ダライアス(Darius)が生前住んでいた屋敷を裁判所とし、週に何度かヴァンパイア界で生じる様々なトラブルを民主的に解決する裁判官を努めていた。その際、ラス王の失脚を未然に防ぐのに多いに活躍したパラダイスの父を顧問役として招き入れる。そして娘のパラダイスはその裁判所で受付や事務など父をサポートしていた。
ブラザーズがまたトレーニングを再開させ、トレーニング生を募ると発表した際、申し込み用紙を裁判所に受け取りに来たクレッジ。
パラダイスはこの時クレッジに出会い、「私もトレーニング参加申し込みするのぉ~」みたいな会話をかわし、お互い一目ぼれ♪。
ここまでが12・13部の話ね。で、この本では、トレーニング生60人の中から、超過酷なサバイバルテストをパスした7人が最終候補生としてブラザースからトレーニングを受ける事になる。その7人の中には当然クレッジとパラダイスも含まれていた。
通常一般的なロマンスって、金持ちヒーローと貧乏ヒロインみたいな組み合わせ多いじゃん。そんな中この本は逆。ヒロインのパラダイスは貴族の箱入り娘。本来ブラザースのトレーニングに参加するなんてもってのほかだが、実際のレッサーとの戦闘には参加しない、ただ護身術を身に着けるためにトレーニングに参加したいと、父に嘘を付きなんとか父を説得して参加。一方クレッジは一般ヴァンパイア人。さかのぼること本家シリーズ6部で、その当時候補生の一人だった、ラッシュ(Lash)が敵対勢力の王オメガの息子だというこが分かり、ラッシュはヴァンパイア界で成長した知識を利用して多くのヴァンパイア貴族や一般人を大量殺戮した。その時クレッジの家族も被害者となり、クレッジはあの事件で孤児となってしまった。以来レッサーに復習する事を心に誓い大人になる。また、床職人だった父がとある貴族の家で仕事をしていた際、貴族に見放されラッシュ率いるレッサー達に殺害され経緯もあり、貴族を毛嫌いしていた。だから本心は父を見捨てた貴族にも復讐心をいだいていた。
ちなみに今回の候補生はあの当時の被害者が成長して、家族のカタキ打つべく候補生になったケースが多い。
だからクレッジは恋愛なんてしてる暇も余裕もない。ましてや、貴族の娘と一般人の自分など身の程しらずで、もってのほか。
そう思っていても、相手への思いはなかなか拭い去る事ができないのが、恋愛ってもんだけど、J・R ウォードって「自分は彼女に相応しくない」とか決め付けて、好きだけど、体が反応して我慢大変だけどww、わざと彼女に嫌われるような態度をとる。でも心の中は、彼女が頭から離れない。そんなヒーローを書かせたら天下一品だね。まるで、3部ザディスト(Zsadist)のよう。
3部の「運命を告げる恋人」を読んだ人なら、クレッジとパラダイスがどんなロマンスか、手に取るように分かるかと。
さて、ダブルロマンスのもうひとつ。
ドメスティックバイオレンスの被害を受けたヴァンパイア女性の保護施設を運営するメリッサは、ある日施設にやってきた見知らぬ女性が暴行の上死亡した事を受けて、彼女の身元と殺人犯を探す事に。暴行・殺人事件といえば、もと刑事のブッチの出番。ブッチは今回の候補生の教官を務める傍ら、メリッサを手助けすることに。これが端を発し、メリッサとブッチが抱える夫婦の問題が明るみになる。ブッチは今でも刑事時代に見た被害者の悲惨な光景が頭から離れずトラウマに悩まされていた。しかしその事はメリッサには言わない。それ以外にも今回の暴行・殺人事件で潜入捜査(BDSMクラブ)にメリッサを同伴させる事を拒んだり、2人のエロでもブッチは絶対メリッサの口の中でイク事はしない。すべては、彼女に無駄な心配をかけたくない、エロでは高貴な存在であるメリッサにそんな破廉恥なことはできない、などが最大の理由。
メリッサは、自分はブッチから阻害されている、貴族出身の箱入り娘は今でもブッチによって箱に閉じこまれている、そんな錯覚をうける。
いい事も悪い事も、恥もお互いが全て受け入れて初めて本当の夫婦になるのよ。相手に心配かけたくないからクサイ物に蓋をしてもダメなのよ。
クレッジとパラダイスがお互い好きなのになかなか結ばれない関係に読者をキリキリさせるのに対し、メリッサとブッチは、お互いすでに愛し合っているけどさらにその上を目指す暖かいホンワカする心理を丁寧に書いてるJ・R ウォード。対照的なダブルロマンスがWet Rush好みでよろしい。
それに、本家シリーズ同様、必ず笑いを入れるのもお約束。
ある夜、ブラザーズの女性達は、ガールズナイトと題してマジック・マイクXXLのDVDを皆で見ることに。残されたブラザーズたちの「重~~~い」空気が超笑える。
「たかが、人間の男が裸でダンスしてるだけだよぉ~」
「うん。たいした事ない」
って口で言うけど、なんで皆そんな酒飲んでる? そして唯一独身でまったく空気読めない、3枚キャラの堕天使のラシータ(Lassiter)、ブラザーズ達をあおって・・・。いやぁ~ホント、ラシータいいキャラだわ。彼が登場してから笑い担当として、ブラザーズでは外せない存在。このシーンは、ブラザーズ達の独占欲を旨くついた面白シーン。
さて、今回枝分かれしたこのシリーズ、候補生のロマンスを主な題材とするならば、6人(1人ストーリーの終盤で脱落)いるわけで、候補生同士のクレッジとパラダイスがカップルになったのを受けて、残り4人のロマンスがある。他にも候補生同士のロマンスって可能性もあるので、多くて後4部続くって事かな。これまた楽しみだね。
そして、本家シリーズの14部目、The Beastは4月5日発売。2部 のレイジ(Rhage)とメアリー(Mary Luce)のその後が主な話のよう。これまた超たのしみ。
日本語版ブラック・ダガー・ブラザーフッドシリーズ / 訳:安原 和見 (Amazon Japan)
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