The Bourbon Thief

クーパー(Cooper McQueen)は褐色の肌に赤いドレスが美しいパリス(Paris)との行きずりの一夜から目覚めた朝、一緒にベットで寝ているはずのパリスがいない事に気づく。パリスはクーパーが所有する1億円はくだらない幻の銘酒、レット・スレッド・バーボンを盗もうとしていた。犯行動機をパリスに問い詰めるクーパー。パリスはこのバーボンは自分の所有物だと主張し、銘酒の秘めた謎、1人の女性タルマ・マッドクッス(Tamara Maddox)の人生と彼女に関連する150年に渡るとある資産家の秘密をクーパーに語り始める。
- 胸熱度 100%
- 濡れ度 70%
- 泣き度 100%
- 総合評価 90%
OMG, OMFG, oh Tiffany, Love Love Love, I Lovin’ it!!!!! (マクドナルドかよ:汗)。
ティファニー・ライス、ホントにもうね、素晴らしすぎます!!!!!
このブログで100名近い作家のレビューを書いてるけど、今のところWet Rushの中では、ティファニー・ライスがブッチギリNo.1だは。
ティファニーの良さを一言で分かりやすく説明するの難しんだけど、ロマンスの面白さやエロの強烈さはもちろんな上に、韻を踏んだ美しい文章に、角度を変えた多方面からの様々なレイヤーが織りなすストーリー展開、普段声を大にして言えないタブーや世間の矛盾を、バッサリ批判する通快感とか、他に類を見ない抜群の構成がもう脱帽ですよ。
ティファニーの代表作といえるBDSMを題材にした、The Original Sinnersシリーズも素晴らしかったけど、レズ、ゲイ、オープセックス、サドに痛みと快楽と、玄人好みな所もあるし、なにしろストーリーの全貌を理解するのに話が長い。そういう意味でこの本は1冊読み切りで、しかもバニラロマンスなので、まだティファニーを読んだ事ない人に、その良さをオススメするのにもってこいな本だと思う。ティファニー入門書だな。
この本は、ケンタッキー州の金持ちバツイチ男性クーパーと黒人の美しい女性パリスが、一夜のセックスを楽しむ所から話が始まるのだが、実は本当のヒーローとヒロインは、パリスが語る1980年当時18歳だったタルマと30歳リビィ(Levi Shelby)のロマンス。
タルマは、レット・スレッド・バーボンの酒醸製造を営むケンタッキー州いち資産家であるマッドクッス家の1人娘。一方リビィは白人と黒人のハーフで魅力的な男性、マッドクッス家が所有する馬の世話を担当する使用人だった。この2人がお互いに惹かれ合う事で、闇に隠れていたマッドクッス家の秘密が明るみになる。それは銘酒、レット・スレッド・バーボンの悲しき誕生秘話とそこから始まる150年にもおよぶ怨念、欲と罪。
1980年、マッドクッス家長タルマの祖父は、すでに息子を2人を亡くしていた(次男がタルマの父)。長男はベトナム戦争で戦死し、タルマの父である次男は数年前に自殺していた。
マッドクッスの名を受け継ぐ次の相続人となるのは、孫娘のタルマだが、祖父の本心は、孫娘(女)ではなく、自分の息子(男)にマッドクッス家を相続させたいと思っていた(代々家系の息子がマッドクッス家を相続して来た)。
実は、祖父には隠れた3番目の息子がいた、それが、使用人のリビィ。昔マッドクッス家で家政婦をしていた黒人女性を犯し子を孕ませた祖父は、リビィが唯一残った息子となるが、リビィに相続はさせたくない。なぜなら、黒人の血が混じったリビィは完璧な息子ではない…。
そこで、祖父は、なんとか白人の「完璧」な血統の息子が欲しいと、タルマの母(義理娘)に息子を産ませようとする。タルマの母は、愛してもいないマッドクッス家の次男と財産目的で結婚した。マッドクッス家の次男はゲイで女性には興味がない。しかし兄が戦死した事を受け、ゲイを認めない父の圧力、その当時の同性愛への偏見などあり、愛してもいない女性と無理やり結婚する。その後生まれた娘タルマも自分の子でない事は分かっていた。それでもタルマを愛し父の役目を担って来たが、同性愛者として、とある男性に出会い愛してしまった事と、マットマックス家の計り知れない陰謀に耐えきれなくなった次男はついに自らの命を立ってしまう。それが最後の父への報復だった。
次男が命を立ったその後も祖父とタルマの母は体を重ね続けていたが、一向に妊娠の兆しがない。そこで、ついに祖父は、まだ子供の孫娘タルマを犯し子を孕ませようとする。
しかし、もっと悲惨な事は、タルマの本当の父は、祖父だった。タルマが自分の娘と分かりながらも、「白人の息子」を手にいれたいばかりに、完全にモラルが消え去り、実の娘を犯そうとする。
さらに、タルマとリビィは腹違いの兄妹、しかし、そこの事を知らずに恋してしまう2人。
人種、性別、そこに執着する浅はかな祖父と、財産を独り占めしたいが為に自ら体を差し出すタルマの母。2人の陰謀に振り回されるタルマとリビィ。
それだけではなく、この「渦を巻く悪」は150年前からずっとマッドクッス家の歴史そのものでもあった。白人家主と奴隷黒人の悲劇。そこから生み出されたレット・スレッド・バーボン。実は、バーボンを盗もうとしたパリスの先祖は、マッドクッス家でもある。
そんなドロドロの入り組んだストーリー、話が混乱しそうだが、マッドクッス家の複雑な所は、タルマ1人の目線で描きものすごくスッキリしてる。
タルマがたくましく家族の陰謀に立ち向かう所とか、そんなタルマを守るリビィの男らしさとか、忘れちゃいけない。この本はロマンスなのよ。
だから、このマッドクッス家のドロドロ話は、あくまでもサイドストーリー。本来の話は、タルマとリビィの熱いロマンス(エロも忘れずに)。
実は兄妹だったタルマとリビィ、その事を知らずに愛し合ってしまったが、最後は、Wet Rush納得の結末(これでいいのだ)。
さらにドロドロ家族の物語と熱いロマンスだけじゃない、人種差別、性別差別、同性愛差別など、どこをどう切っても、充実なレイヤーを多彩に話に盛り込み、何故こんな入り組んだストーリーを1冊でスッキリまとめられるのか、疑問さえ湧き上がる程に、すべての文章にまったく無駄のない、文脈すべてが濃密で濃厚なこの本。
丁度今、アメリカ新大統領誕生に、人種問題が再熱してるこの頃、人間の醜さや偏見が、今とリンクしてこの時期にこの本を読む意味がより大きく思えたよ。
37年前のタルマとリビィのロマンス、それに関連するドロドロ家族物語、さらに150年前のレット・スレッド・バーボン誕生の悲劇、現在に話が戻るパリスのバーボン泥棒。ティファニーお得意の時系列バラバラな話の展開が、関連がないようで実はすべて話しが繋がってる、その辺の他の作家が作る「出会って、いろいろあって、最後に結ばれる」そんな単純ロマンスとはあきらかに格が違う。
ティファニーってケンタッキー州出身なのね。だから、アメリカ中西部の美しい自然を描写する文章も光ってる。そう言えば、The Original Sinnersシリーズにも馬とケンタッキーは登場してる。
さらにさらに、ティファニーの美しい文章と、なぜかコミカルな描写が、ドロドロ家族物語、暗くて重そうな話がまったくそう感じない。その世界感ったらもうさぁ、とにかく素晴らしい!!!!!
文句なしでございます。
マッドマックス?マットマックス?マドックス?
レビューへの熱量とマドックス家のドロドロ具合がすごい。圧倒されました。愛読ブログになりそうです。
5時さん。そうですね。マッドクッスですね。失礼しました & 修正しておきました。
この本、読み終わった興奮状態のまま、レビュー書いて、ネタバレしすぎたと反省した本です。良い本を読んだ後って、どうしても興奮しちゃって、余計な事もベラベラ喋りがちになる。反省です。
まぁとにかく、レビューの熱量=ティファイニー愛を感じていただけただけでも本望かと(笑)